六甲山麓温泉物語 (愛の郷だよりバックナンバーより)

神戸・阪神間には天然温泉が多くあります。われわれの住む六甲山麓の北部には日本三古湯のひとつ有馬温泉を筆頭に、フルーツフラワーパークの大沢温泉、鹿之子温泉、八多のぽかぽか温泉、唐櫃温泉などがあります。六甲山の南側でも新たに温泉が湧き出したり、以前温泉が出ていた諏訪山温泉や布引温泉などもありました。東では宝塚温泉、武田尾温泉など有名な温泉が名を連ねす。もっと先に行くと箕面温泉、伏見温泉など、温泉地が連なっています。
もともと六甲山は火山性の山ではなく、プレートが押されることにより盛り上がってできた山です。六甲最高峰の高さはプレートが動くたびに変化し、阪神淡路大震災前は 931.13m でしたが、震災後には 931.25m と 12cm 高くなりました。
しかし火山が存在しない六甲山周辺に温泉が多いのは不思議に思えてなりません。近年有馬温泉の金泉の起源は瀬戸内海ではなく、太平洋(南海トラフ付近)の海水を起源とすることが解明されました。それでもう少し調べてみますと、これらは非火山性の温泉で、地下のマグマを熱源とはしない温泉でした。その熱源や温泉水の起源については、わかってないものが多いですが、地質的に活断層である有馬高槻構造線の西端にあるため地下深くまで岩盤が割れて、その割れ目を通って地下深くから温泉水が噴出しています。阪神淡路大震災の時に活断層という言葉が出ていましたが、この断層に沿って湧き出しているのがわかっています。つまり、断層は温泉の通り道ということになります。
それを最も単純に表すと六甲山周辺は、『温泉が多い』=『断層が多い』=『地震時に被害が大きい』=『普段から災害に備える』という等式が成り立つのではないでしょうか。温泉地が近いというのは大きなメリットでありますが、災害に対する心構えが必要です。

 

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